【0から学ぶAI】第293回:OpenPoseによる姿勢推定 〜人間の関節位置を推定する方法を説明

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前回のおさらいと今回のテーマ

こんにちは!前回は、顔認識の基本について解説し、顔検出と認識の手法について学びました。顔認識技術は、セキュリティや認証、ソーシャルメディアでの応用が広がっています。

今回は、AIによる姿勢推定(Pose Estimation)にフォーカスし、その代表的なライブラリであるOpenPoseについて解説します。OpenPoseは、画像や動画から人間の関節位置を推定し、姿勢や動作を解析する技術です。この記事では、OpenPoseの仕組みとその実装方法、さらには姿勢推定の応用について詳しく説明します。

姿勢推定(Pose Estimation)とは?

姿勢推定とは、画像や映像内の人間の関節位置を特定し、身体のポーズ(姿勢)を推定する技術です。この技術は、特定の関節(例:頭、肩、肘、膝、足首など)の位置をピクセル単位で特定し、それらをつなげることで、全体の骨格を再現します。

姿勢推定の主な応用例

  1. スポーツ解析: 運動のフォームを分析し、トレーニングやパフォーマンス向上に役立てます。
  2. リハビリテーション支援: 動作の正確性を監視し、リハビリテーションの進行状況を評価します。
  3. ダンスやエンターテインメント: 振付の自動評価や、アバターの動作制御に利用されています。
  4. モーションキャプチャ: ゲームや映画の制作で、キャラクターのリアルな動きを再現するために使用されます。

OpenPoseとは?

OpenPoseは、Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)で開発されたオープンソースの姿勢推定ライブラリで、人体の複数の関節や顔のランドマーク、手の関節などを高精度に推定することができます。OpenPoseは、以下のような特徴を持っています。

  • リアルタイム処理: 高速かつ高精度に関節の位置を推定でき、リアルタイムでの姿勢解析が可能です。
  • マルチパーソン対応: 一つの画像や映像内に複数の人がいる場合でも、個別に関節位置を推定できます。
  • 顔と手のランドマーク推定: 人体全体だけでなく、顔の表情や手のジェスチャーも解析可能です。

OpenPoseは、スポーツ解析やエンターテインメント、医療分野など幅広い領域で利用されています。

OpenPoseの仕組み

OpenPoseの姿勢推定は、ディープラーニング(特に畳み込みニューラルネットワーク:CNN)を用いて実現されています。具体的には、以下のような手順で動作します。

1. 特徴マップの抽出

まず、入力画像から特徴マップを抽出します。これは、CNNを使って画像中のエッジやテクスチャなどの特徴を抽出する過程であり、これによって画像中の関節や骨格の位置を識別するための情報が得られます。

2. パート・アフィニティ・フィールド(Part Affinity Fields, PAFs)の生成

OpenPoseは、人体の各部位(例:肩、肘、膝など)の位置情報だけでなく、それらの部位がどのように連結されているか(関節と関節を結ぶ線)も予測します。この関節間の接続情報をPAFsと呼び、これにより、関節がどのように配置されているかが判断されます。

3. 関節の位置推定と接続

次に、画像中で推定された関節の位置とPAFsを基に、人体の骨格を構築します。複数の人がいる場合でも、個々の関節と接続を正確に対応付け、各人物ごとに骨格モデルを生成します。

4. 姿勢の描画と解析

最後に、推定された関節位置と接続情報を元に、画像上に骨格を描画します。これにより、各人物の姿勢が可視化され、動作の解析やリアルタイムフィードバックが可能になります。

OpenPoseの実装方法

それでは、Pythonを使ってOpenPoseを実装する方法を紹介します。OpenPoseの公式ライブラリを利用することで、簡単に姿勢推定を実行できます。

必要なライブラリのインストール

OpenPoseのPython APIを使用するためには、OpenPoseの公式リポジトリをクローンし、環境を設定する必要があります。以下はその基本的な手順です。

# OpenPoseリポジトリのクローン
git clone https://github.com/CMU-Perceptual-Computing-Lab/openpose.git
cd openpose

# 依存関係のインストール
sudo apt-get install build-essential cmake
sudo apt-get install libopencv-dev

次に、PythonでOpenPoseを使うためのセットアップを行います。詳しい手順は公式のドキュメントを参考にしてください。

コードの実装

以下のコード例は、OpenPoseを使って画像内の人物の姿勢を推定し、結果を表示するものです。

import cv2
import numpy as np
from openpose import pyopenpose as op

# OpenPoseの設定
params = dict()
params["model_folder"] = "openpose/models/"

# OpenPoseの初期化
opWrapper = op.WrapperPython()
opWrapper.configure(params)
opWrapper.start()

# 入力画像の読み込み
image_path = "test_image.jpg"
image = cv2.imread(image_path)

# 姿勢推定の実行
datum = op.Datum()
datum.cvInputData = image
opWrapper.emplaceAndPop([datum])

# 結果の表示
output_image = datum.cvOutputData
cv2.imshow("OpenPose", output_image)
cv2.waitKey(0)
cv2.destroyAllWindows()

コードの解説

  • params["model_folder"]: OpenPoseのモデルデータが保存されているフォルダを指定します。
  • opWrapper.start(): OpenPoseのラッパーを初期化し、姿勢推定を実行できる状態にします。
  • datum.cvInputData: OpenPoseに画像データを渡し、姿勢推定を実行します。
  • datum.cvOutputData: 推定結果が描画された画像を取得し、表示します。

OpenPoseの応用

OpenPoseは姿勢推定だけでなく、以下のような応用が可能です。

1. スポーツ解析

OpenPoseを使うことで、アスリートのフォームやパフォーマンスを分析し、トレーニング効果を向上させることができます。例えば、ゴルフのスイングやランニングフォームの分析に利用されます。

2. リハビリテーション支援

リハビリテーションの現場では、患者の動作をリアルタイムで解析し、正確な動きができているかを確認するためにOpenPoseが活用されています。これにより、セラピストが効果的な指導を行いやすくなります。

3. エンターテインメントとゲーム

OpenPoseは、ダンスやパフォーマンスの自動評価、VRゲームやアバターのモーションキャプチャにも利用されています。これにより、キャラクターの動きをよりリアルに再現することが可能です。

姿勢推定技術の課題と注意点

OpenPoseや姿勢推定技術は非常に強力ですが、以下のような課題も存在します。

  1. 照明条件の影響: 照明が不足していたり、逆光になっている場合、関節の位置を正確に推定できないことがあります。
  2. 衣服や背景の影響: 類似した色やパターンが背景や衣服にあると、誤検出が発生する可能性があります。
  3. **リアルタイ

ム処理の負荷**: OpenPoseは非常に高精度ですが、その分計算コストが高く、リアルタイム処理には高性能なGPUが必要です。

まとめ

今回は、OpenPoseによる姿勢推定について、人間の関節位置を特定し、姿勢を解析する方法を詳しく解説しました。OpenPoseはスポーツ解析、リハビリ支援、エンターテインメントなど幅広い分野で応用可能な技術です。この技術を学ぶことで、画像解析の応用範囲をさらに広げることができます。

次回予告

次回は、コンピュータビジョンの評価指標として、精度、IoU、mAPなどの指標を詳しく紹介します。これらの指標を理解することで、画像処理モデルの性能を正確に評価する方法を学びましょう!


注釈

  • PAFs(パート・アフィニティ・フィールド): 関節間の接続情報を表現するフィールドで、骨格の構築に利用されます。
  • リアルタイム処理: 高速で画像や映像を処理し、即座に結果を得る処理方式。
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