【0から学ぶAI】第281回:画像分類モデルの構築 〜CNNを用いた画像分類の実装方法を説明

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前回のおさらいと今回のテーマ

こんにちは!前回は、特徴量抽出について解説し、SIFT、SURF、ORBといった手法を使って画像から特徴点を検出する方法を紹介しました。これらの技術は、物体認識やパターンマッチングにおいて非常に有効ですが、手動で特徴量を設定する必要がありました。

今回は、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いた画像分類モデルの構築方法を解説します。CNNは、ディープラーニングの技術を活用して画像データから自動的に特徴量を抽出し、物体の分類や認識を行います。本記事では、CNNの基本構造とPythonによる実装方法について学びます。

画像分類とは?

画像分類とは、入力された画像を特定のカテゴリに分類するタスクです。例えば、動物の画像を猫、犬、鳥などのカテゴリに分類することや、手書き数字を0から9までの数字に分類することが該当します。

画像分類の用途

  • 自動運転: カメラで撮影された映像から、道路標識や他の車両、歩行者などを分類して認識します。
  • 医療画像解析: X線画像やMRI画像を解析し、異常部位や病変を特定します。
  • セキュリティシステム: 監視カメラ映像から特定の人物やオブジェクトを検出し、分類します。

CNN(畳み込みニューラルネットワーク)とは?

CNN(Convolutional Neural Network)は、画像データの特長を自動的に抽出し、それに基づいて分類を行うディープラーニングの一種です。従来の手法では、画像の特徴量を手動で設定する必要がありましたが、CNNは大量のデータを使って自ら特徴を学習し、最適な分類を行うことができます。

CNNの基本構造

CNNは、以下のようなレイヤー(層)で構成されています。

  1. 畳み込み層(Convolutional Layer): 画像に対してフィルタ(カーネル)を適用し、特徴量マップを生成します。この層で画像のエッジやパターン、テクスチャなどの特徴が抽出されます。
  2. プーリング層(Pooling Layer): 特徴量マップをダウンサンプリングし、画像のサイズを縮小します。これにより、計算量を削減し、特徴量のロバスト性を高めます。
  3. 全結合層(Fully Connected Layer): 最後に、抽出された特徴をフラットなベクトルに変換し、分類を行います。ここで、異なるクラスに対する確率が計算され、最も高い確率のクラスが最終的な予測結果となります。

CNNによる画像分類モデルの実装

ここでは、PythonとTensorFlow/Kerasを使用して、CNNによる画像分類モデルを構築する方法を紹介します。今回は、代表的なデータセットであるMNIST(手書き数字データセット)を用いて、0〜9の数字を分類するモデルを構築します。

1. 必要なライブラリのインストール

まず、tensorflowライブラリをインストールします。

pip install tensorflow

2. CNNモデルの構築と学習

以下のコードでは、CNNを用いてMNISTデータセットを分類するモデルを構築し、学習させます。

import tensorflow as tf
from tensorflow.keras import layers, models
from tensorflow.keras.datasets import mnist
import matplotlib.pyplot as plt

# データセットの読み込み
(x_train, y_train), (x_test, y_test) = mnist.load_data()

# データの正規化と形状の調整
x_train = x_train.reshape((x_train.shape[0], 28, 28, 1)).astype('float32') / 255
x_test = x_test.reshape((x_test.shape[0], 28, 28, 1)).astype('float32') / 255

# CNNモデルの構築
model = models.Sequential([
    layers.Conv2D(32, (3, 3), activation='relu', input_shape=(28, 28, 1)),
    layers.MaxPooling2D((2, 2)),
    layers.Conv2D(64, (3, 3), activation='relu'),
    layers.MaxPooling2D((2, 2)),
    layers.Conv2D(64, (3, 3), activation='relu'),
    layers.Flatten(),
    layers.Dense(64, activation='relu'),
    layers.Dense(10, activation='softmax')
])

# モデルのコンパイル
model.compile(optimizer='adam',
              loss='sparse_categorical_crossentropy',
              metrics=['accuracy'])

# モデルの学習
history = model.fit(x_train, y_train, epochs=5, validation_data=(x_test, y_test))

# 学習結果の表示
plt.plot(history.history['accuracy'], label='accuracy')
plt.plot(history.history['val_accuracy'], label='val_accuracy')
plt.xlabel('Epoch')
plt.ylabel('Accuracy')
plt.legend()
plt.show()
  • データセットの読み込み: MNISTデータセットを読み込み、トレーニング用とテスト用に分けます。
  • データの正規化: 画像のピクセル値(0〜255)を0〜1に正規化します。
  • CNNモデルの構築: 3つの畳み込み層と2つのプーリング層で構成されたモデルを構築します。最後に全結合層とソフトマックス層を加え、0〜9のクラスに分類します。
  • モデルの学習: データセットを用いてモデルを5エポック学習させます。
  • 学習結果の可視化: 学習過程における精度をグラフで表示します。

3. モデルの評価

学習したモデルを評価し、テストデータでの性能を確認します。

# モデルの評価
test_loss, test_acc = model.evaluate(x_test, y_test, verbose=2)
print(f"テストデータでの精度: {test_acc:.4f}")
  • evaluate(): テストデータを用いてモデルの性能(精度)を評価します。

学習の結果、モデルは手書き数字の分類において非常に高い精度(約98%)を達成することができます。

CNNの改良と応用

1. データ拡張

CNNモデルの精度を向上させるために、データ拡張が有効です。データ拡張は、画像を回転、平行移動、拡大縮小などの操作を行うことで、データセットの多様性を増やし、モデルの汎化性能を高めます。次回はこのデータ拡張について詳しく解説します。

2. 転移学習

大量のデータと計算リソースが必要なCNNの学習ですが、すでに学習済みのモデルを基にして新しいデータセットに適応させる転移学習が効果的です。VGG、ResNetなどの事前学習モデルを使用することで、短時間で高精度な分類が可能となります。

3. 異なるアーキテクチャの利用

さらに、ResNetInceptionなど、様々なアーキテクチャが開発されており、複雑な分類タスクに対応できます。これらのアーキテクチャは深層構造を持ち、画像の細かい特徴をより詳細に学習することができます。

画像分類モデルの応用例

1. 自動運転車の物体認識

自動運転車では、道路標識や他の車両、歩行者などをリアルタイムで認識し、運転の意思決定に活用しています。CNNモデルが、車載カメラから得られる画像を分類することで、安全な運転を支援します。

2. 医療診断支援システム

医療分野では、MRIやX線画像を解析し、疾患の早期発

見を支援するシステムが開発されています。CNNモデルは、医療画像から異常を検出し、医師の診断を補助します。

3. 監視システム

監視カメラ映像から特定の人物やオブジェクトを検出し、不審な動きを特定するシステムがあります。CNNは、映像内の物体を迅速に分類し、セキュリティの向上に貢献しています。

まとめ

今回は、CNNを用いた画像分類モデルの構築方法について解説しました。CNNは、画像データから自動的に特徴を抽出し、物体やパターンを分類するための非常に強力な手法です。次回は、データ拡張について、画像データを増やす方法とその実装について詳しく説明します。

次回予告

次回は、データ拡張の実践として、画像データを増やし、モデルの精度を向上させる手法を解説します。実際のデータ拡張方法やその効果について学びましょう!


注釈

  • 畳み込み層: 画像の局所的な特徴を抽出する層で、エッジやパターンを検出します。
  • プーリング層: 特徴量マップのサイズを縮小し、計算コストを削減する層。
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