【0から学ぶAI】第262回:テキスト要約の基礎

目次

前回のおさらいと今回のテーマ

こんにちは!前回は、Seq2Seqモデルによる翻訳について解説しました。Seq2Seqモデルは、エンコーダとデコーダを用いてシーケンスを別のシーケンスに変換する技術であり、機械翻訳の分野で広く利用されています。

今回は、テキスト要約の基礎について解説します。テキスト要約は、長い文章を短くまとめ、重要な情報を抽出する技術であり、ニュースの要約やレポートの作成などで利用されています。この記事では、テキスト要約の基本的な考え方と手法、具体的な実装方法を紹介します。

テキスト要約とは?

1. テキスト要約の基本概念

テキスト要約は、長い文章から重要な情報を抽出し、短くまとめることを目的とした技術です。これにより、文章の内容を効率的に把握でき、時間の節約にもつながります。テキスト要約には、主に以下の2つのアプローチがあります。

  • 抽出的要約(Extractive Summarization):元の文章から重要な文やフレーズを抽出して要約を作成する手法。
  • 生成的要約(Abstractive Summarization):元の文章の内容を基に新しい文章を生成して要約を作成する手法。

2. 要約の応用例

テキスト要約は、多くの分野で活用されています。

  • ニュース記事の要約:ニュースの長い記事を短くまとめ、要点を把握しやすくする。
  • 論文やレポートの要約:学術論文の要点を効率的に把握し、リサーチをサポートする。
  • 会議メモの要約:会議の記録を簡潔にまとめ、重要な決定事項やアクションアイテムを抽出する。

抽出的要約

1. 抽出的要約の基本

抽出的要約では、元の文章からそのまま一部の文や句を取り出して要約を作成します。このアプローチはシンプルで、文章の意味を保持しやすいという利点があります。抽出的要約のアルゴリズムには、以下のような手法が含まれます。

  • スコアリングベース:各文にスコアを割り当て、スコアの高い文を要約に含める。
  • グラフベース(TextRank):文の関連性をグラフとして表現し、PageRankのようなアルゴリズムで重要な文を抽出する。

2. 抽出的要約の手法

以下に、代表的な抽出的要約手法を紹介します。

スコアリングベースの要約

スコアリングベースの要約手法では、各文に重要度スコアを割り当て、そのスコアに基づいて要約を作成します。スコアは以下のような特徴量を基に計算されることが多いです。

  • TF-IDF:文章中の単語の重要度を計算し、それに基づいて文のスコアを評価。
  • 文位置:文の出現位置が重要とされる場合、先頭や末尾の文に高いスコアを付与する。

グラフベースの要約(TextRank)

TextRankは、グラフベースのアルゴリズムで、文章をグラフとしてモデル化します。各文をノードとして扱い、文同士の類似度をエッジの重みとすることで、PageRankに基づいて重要な文を抽出します。

生成的要約

1. 生成的要約の基本

生成的要約は、元の文章の内容を要約するために、新しい文章を生成する手法です。抽出的要約と異なり、要約文は元の文章に直接含まれないことが多く、より人間らしい表現が可能です。

2. 生成的要約の手法

生成的要約は主にSeq2Seqモデルや注意機構を用いた手法で行われます。近年では、BERTやGPTなどの大規模な言語モデルを用いた手法が注目されています。

Seq2Seqモデルによる生成的要約

生成的要約においては、Seq2Seqモデルを用いることが一般的です。Seq2Seqモデルは、エンコーダ・デコーダ構造を持ち、エンコーダで元の文章を理解し、デコーダで新しい要約文を生成します。

Transformerモデルによる生成的要約

Transformerモデルは、Attention機構を活用して文脈を捉えることに優れており、生成的要約においても高い性能を発揮します。特に、BERTやGPTなどの事前学習済みモデルを用いることで、より自然な要約が可能です。

抽出的要約の実装例

ここでは、PythonのGensimライブラリを使って抽出的要約を実装する方法を紹介します。

1. 必要なライブラリのインストール

まず、Gensimライブラリをインストールします。

pip install gensim

2. Gensimを使った抽出的要約

次に、Gensimを使って抽出的要約を実装します。ここでは、TextRankアルゴリズムを用いて要約を行います。

from gensim.summarization import summarize

# サンプルテキスト
text = """
Machine learning is a field of artificial intelligence (AI) that uses statistical techniques to give computer systems 
the ability to learn from data, without being explicitly programmed. The name machine learning was coined in 1959 by 
Arthur Samuel. Machine learning is closely related to computational statistics, which focuses on making predictions using computers.
"""

# Gensimを用いた要約
summary = summarize(text, ratio=0.5)  # 文章の50%を要約
print("Original Text:")
print(text)
print("\nSummary:")
print(summary)

このコードでは、元のテキストの50%を抽出的要約しています。Gensimのsummarize関数を使うことで、簡単に要約を作成することができます。

生成的要約の実装例

次に、Pythonのtransformersライブラリを使用して、生成的要約を実装します。ここでは、事前学習済みのBARTモデルを用います。

1. 必要なライブラリのインストール

まず、transformersライブラリをインストールします。

pip install transformers

2. BARTを使った生成的要約

次に、transformersライブラリを使用してBARTモデルを用いた生成的要約を行います。

from transformers import pipeline

# 生成的要約のパイプラインを作成
summarizer = pipeline("summarization", model="facebook/bart-large-cnn")

# サンプルテキスト
text = """
Machine learning is a field of artificial intelligence (AI) that uses statistical techniques to give computer systems 
the ability to learn from data, without being explicitly programmed. The name machine learning was coined in 1959 by 
Arthur Samuel. Machine learning is closely related to computational statistics, which focuses on making predictions using computers.
"""

# BARTを用いた要約
summary = summarizer(text, max_length=50, min_length=25, do_sample=False)
print("Original Text:")
print(text)
print("\nSummary:")
print(summary[0]['summary_text'])

このコードでは、BARTを用いてサンプルテキストの生成的要約を行います。max_lengthmin_lengthパラメータを設定することで、要約文の長さを調整することができます。

テキスト要約の評価方法

テキスト要約の性能を評価するためには、以下の指標が一般的に使用されます。

1. ROUGE(Recall-Oriented Understudy for Gisting Evaluation)

ROUGEは、要約結果と参照要約との重なり具合を測る指標です。特に、単語のn-gramの重なりや長い連続した単語の重なりを評価するROUGE-N

やROUGE-Lが使用されます。

2. BLEU(Bilingual Evaluation Understudy)

BLEUは、翻訳タスクで使用される評価指標ですが、生成的要約の評価にも適用されます。生成された要約と参照要約とのn-gramの一致を評価します。

まとめ

今回は、テキスト要約の基礎について、抽出的要約と生成的要約の手法を紹介しました。テキスト要約は、情報を効率的に伝達するための重要な技術であり、ニュース要約やレポート作成などで幅広く活用されています。

次回予告

次回は、言語モデルの評価方法について解説します。パープレキシティなどの評価指標を用いたモデルの性能評価について学びましょう。


注釈

  1. 抽出的要約(Extractive Summarization):元の文章から一部をそのまま抜き出して要約する手法。
  2. 生成的要約(Abstractive Summarization):元の文章の内容を基に新しい表現で要約する手法。
  3. ROUGEスコア:要約の評価指標として使用されるリコール指向の評価指標。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社PROMPTは生成AIに関する様々な情報を発信しています。
記事にしてほしいテーマや調べてほしいテーマがあればお問合せフォームからご連絡ください。
---
PROMPT Inc. provides a variety of information related to generative AI.
If there is a topic you would like us to write an article about or research, please contact us using the inquiry form.

コメント

コメントする

目次