【0から学ぶAI】第198回:音声生成モデル 〜 音声合成技術の基本を解説

目次

前回の振り返り:テキスト生成の評価指標

前回は、テキスト生成の評価指標について解説し、生成されたテキストの質を評価するための基準となるパープレキシティBLEUスコアについて説明しました。パープレキシティはモデルの予測精度を測るための指標であり、BLEUスコアは生成されたテキストと参照テキストの一致度を評価する方法です。今回は、テキスト生成とは異なるが密接に関連する音声生成モデルについて説明します。

音声生成モデルとは?

音声生成モデルは、テキストデータなどの入力情報から、自然な音声を合成するための技術です。音声合成技術は、スマートフォンの音声アシスタント、ナビゲーションシステム、音声読み上げソフトなど、さまざまな場面で使用されています。

音声生成モデルにはいくつかの方法がありますが、ここでは主に以下の3つの手法を紹介します:

  1. ルールベース音声合成(Rule-based synthesis)
  2. ユニット選択音声合成(Unit selection synthesis)
  3. パラメトリック音声合成(Parametric synthesis)

1. ルールベース音声合成

ルールベース音声合成は、音声生成の初期の方法であり、発音ルールや音素の組み合わせによって音声を合成する手法です。この手法では、音声を生成するために多くの規則が必要であり、自然な発音を得るのが難しいという課題があります。そのため、より自然な音声合成を目指して他の手法が開発されました。

2. ユニット選択音声合成

ユニット選択音声合成では、大量の音声データから事前に録音された音素(音の最小単位)を選び、それを組み合わせて音声を合成します。この手法は、録音された音声の品質に依存するため、発音の自然さを高めることができます。しかし、選択した音素のつなぎ目が不自然になることがあるため、必ずしもスムーズな音声が得られるとは限りません。

3. パラメトリック音声合成

パラメトリック音声合成は、音声の特性(声質、音の高さ、長さなど)をパラメータとして表現し、それらのパラメータを調整することで音声を生成する手法です。これにより、合成音声の音質や発音の柔軟性を高めることができますが、生成された音声はやや機械的な印象を受けることがあります。

音声生成の現代的アプローチ:ニューラルネットワークベースの音声合成

近年、ニューラルネットワークを活用した音声合成技術が急速に発展しており、これにより従来の手法を超える高品質な音声生成が可能になっています。代表的なアプローチとして、WaveNetTacotronなどがあります。

WaveNet

WaveNetは、Googleが開発したニューラルネットワークベースの音声生成モデルで、音声波形を直接生成することが特徴です。WaveNetは、従来の音声合成手法と比べて音質が大幅に向上しており、より自然な音声を生成できます。

WaveNetの詳しい解説は次回行いますが、この技術は人間の発話の波形そのものを生成するため、極めてリアルな音声を作り出せる点が大きな特徴です。

Tacotron

Tacotronは、テキストからメルスペクトログラム(音声の特徴を時間軸と周波数軸で表現したもの)を生成し、それを音声波形に変換することで音声を生成します。Tacotronは、WaveNetと組み合わせることでさらに高品質な音声合成を実現します。

音声生成の応用例

音声生成モデルは、以下のような場面で活用されています:

  1. 音声アシスタント
  • 音声合成技術を使って、ユーザーの質問に対する回答を自然な音声で提供します。例えば、GoogleアシスタントやAmazon Alexaがこれに該当します。
  1. ナビゲーションシステム
  • カーナビやGPSデバイスにおいて、ルート案内を音声で行う際に使用されます。
  1. 視覚障害者向け支援
  • 視覚障害者向けにテキストを音声に変換する技術が役立ちます。これにより、書籍やウェブページの内容を読み上げることが可能です。
  1. エンターテイメント
  • 映画やゲームにおいて、キャラクターの声を合成することで、リアルな表現を加えることができます。

音声生成モデルの評価指標

音声生成モデルの品質を評価する際には、以下のような評価指標が用いられます:

  1. MOS(Mean Opinion Score)
  • 主観的な評価方法であり、人間が聞いて音声の自然さや品質を評価します。1から5のスコアで表され、5が最も高い品質を示します。
  1. PESQ(Perceptual Evaluation of Speech Quality)
  • 音声品質を数値化する客観的な指標です。MOSと同様に音声の自然さを評価することが目的ですが、自動で評価できる点が異なります。
  1. STOI(Short-Time Objective Intelligibility)
  • 音声の明瞭性や聞き取りやすさを評価する指標です。特に音声認識タスクで使用されます。

まとめ

今回は、音声生成モデルについて解説しました。音声生成はルールベースからニューラルネットワークベースへと進化し、品質が飛躍的に向上しています。次回は、ニューラルネットワークベースの代表的な音声生成モデルであるWaveNetについて、さらに詳しく解説します。


次回予告

次回は、WaveNetについて詳しく解説します。WaveNetは、Googleが開発した先進的な音声生成技術で、従来の音声合成を超える自然さを実現しています。お楽しみに!


注釈

  1. 音声生成モデル: テキストやその他のデータから音声を生成するためのモデル。
  2. ルールベース音声合成: 発音ルールを用いて音声を生成する手法。
  3. ユニット選択音声合成: 大量の録音データから音素を選び出して組み合わせる音声生成手法。
  4. パラメトリック音声合成: 音声の特性をパラメータとして表現し、その調整によって音声を生成する手法。
  5. WaveNet: Googleが開発した音声生成モデルで、音声波形を直接生成する。
  6. Tacotron: メルスペクトログラムを生成し、それを音声に変換する音声合成技術。
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