【0から学ぶAI】第131回:データの不均衡への対処

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前回の振り返り:次元削減の応用

前回は、データの次元削減手法であるt-SNEUMAPを使って、高次元データを効率よく低次元に変換し、可視化やモデルの性能向上を図る方法について学びました。次元削減は、データの複雑な構造を把握しやすくし、モデルの過学習を防ぐために非常に有効な技術です。

今回は、機械学習においてよく見られる「データの不均衡問題」について、どう対処するかを解説します。特に、サンプリング手法に焦点を当て、少数クラスと多数クラスのバランスを取る方法について詳しく見ていきます。

データの不均衡とは?

データの不均衡(Imbalanced Data)とは、分類タスクにおいて、異なるクラス間でデータの分布が大きく異なる状態を指します。例えば、2つのクラスが存在する場合、片方のクラス(多数クラス)に属するデータが非常に多く、もう片方のクラス(少数クラス)のデータが非常に少ないといったケースです。このようなデータの不均衡は、モデルが多数クラスに偏って学習してしまい、少数クラスのデータを正確に予測できなくなるリスクを引き起こします。

例えで理解するデータの不均衡

データの不均衡は「スポーツチームの試合で、一方のチームに選手が10人いて、もう一方のチームには1人しかいない」状況に例えられます。試合を続けると、選手の多いチームが圧倒的に有利になり、もう片方のチームは不利な状況に陥ります。これが機械学習モデルでも同じように起こり、多数クラスの方にモデルが偏ってしまいます。

データの不均衡への対処法

データの不均衡を解決するためには、データをリサンプリング(再サンプリング)することが有効です。これには、アンダーサンプリングオーバーサンプリングという2つの主な手法があります。

アンダーサンプリング

アンダーサンプリング(Under-sampling)は、多数クラスのデータを削減して、少数クラスとのバランスを取る方法です。これにより、学習データのバランスを改善し、モデルが少数クラスにも焦点を当てて学習するよう促すことができます。

アンダーサンプリングのメリット

  • データセット全体のサイズが小さくなるため、モデルの学習が高速化します。
  • 計算コストが削減され、リソースの節約が可能です。

アンダーサンプリングのデメリット

  • 多数クラスのデータを削減することで、重要な情報が失われるリスクがあります。
  • データが少ないと、モデルが十分に学習できなくなる可能性があります。

例えで理解するアンダーサンプリング

アンダーサンプリングは「人数の多いチームから選手を削減して、両チームの人数を均等にする」作業に例えられます。このようにして、少数クラスと多数クラスのバランスを取りますが、削減しすぎると重要な選手(データ)を失うリスクも伴います。

オーバーサンプリング

オーバーサンプリング(Over-sampling)は、少数クラスのデータを増やすことで、クラス間のバランスを取る方法です。少数クラスのデータを複製したり、新たなデータポイントを生成したりして、少数クラスのサンプル数を増やします。

オーバーサンプリングのメリット

  • 少数クラスのデータが増えることで、モデルが少数クラスを無視せず、適切に学習できるようになります。
  • 重要な情報を削除することなく、データ全体を最大限に活用できます。

オーバーサンプリングのデメリット

  • 少数クラスのデータを複製することで、過学習のリスクが高まることがあります。
  • データセットのサイズが大きくなり、計算コストが増加する可能性があります。

例えで理解するオーバーサンプリング

オーバーサンプリングは「少数チームに選手を補充して、両チームの人数を均等にする」作業に似ています。これにより、少数クラスのデータも十分に学習されるようになりますが、同じ選手を何度も使うと戦略の多様性が損なわれる可能性があります。

サンプリング手法の応用

ランダムサンプリング

最もシンプルな方法は、データポイントをランダムに選び出して、サンプリングする方法です。アンダーサンプリングでもオーバーサンプリングでも、ランダムにデータを削減・増加させることで、クラス間のバランスを取ります。

  • ランダムアンダーサンプリング: 多数クラスからランダムにデータを削減する。
  • ランダムオーバーサンプリング: 少数クラスをランダムに複製する。

ランダムサンプリングは手軽ですが、データの重要なパターンを無視してしまうリスクがあり、複雑なデータには向かないことがあります。

層別サンプリング

層別サンプリングでは、データセットをクラスごとに分け、そのクラスごとにバランスよくサンプリングを行います。これにより、各クラスの特徴を保ちながら、バランスの取れたデータセットを作ることができます。

合成サンプリング

合成サンプリング(Synthetic Sampling)は、少数クラスのデータを新たに生成して増加させる手法です。次回取り上げるSMOTE(Synthetic Minority Over-sampling Technique)がその代表例で、少数クラスのデータポイント間で新しいデータを生成することで、より多様なサンプルを作り出します。

サンプリング手法の選び方

データの不均衡に対処するためのサンプリング手法は、データセットの規模やモデルの特性に応じて選ぶ必要があります。

  • 少数クラスのデータが重要で、情報を失いたくない場合は、オーバーサンプリングが適しています。
  • データセットが非常に大きく、計算リソースを節約したい場合は、アンダーサンプリングが有効です。
  • 多数クラスと少数クラスの間で、多様性を保ちたい場合は、合成サンプリングや層別サンプリングを検討しましょう。

まとめ

今回は、機械学習におけるデータの不均衡問題に対処するためのサンプリング手法について解説しました。アンダーサンプリングオーバーサンプリングは、少数クラスと多数クラスのデータバランスを調整し、モデルの学習精度を向上させるために使われます。次回は、少数クラスのデータを増やす方法として広く使われているSMOTEについて詳しく解説します。


次回予告

次回は、SMOTEによるオーバーサンプリングについて解説します。少数クラスのデータを新たに生成し、データの不均衡を解消する手法を学びましょう。


注釈

  1. データの不均衡(Imbalanced Data): クラスごとのデータ数に大きな差がある状態。
  2. アンダーサンプリング(Under-sampling): 多数クラスのデータを削減してクラス間のバ

ランスを取る手法。

  1. オーバーサンプリング(Over-sampling): 少数クラスのデータを増加させてバランスを取る手法。
  2. 層別サンプリング: 各クラスごとにデータを分けて、バランスよくサンプリングを行う方法。
  3. SMOTE: 合成サンプリングの一種で、少数クラスのデータ間に新しいデータポイントを生成する手法。
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