前回の振り返り:カテゴリ変数の扱い方
前回は、カテゴリ変数を数値に変換する方法であるラベルエンコーディングとワンホットエンコーディングについて解説しました。カテゴリデータは、数値と異なり、そのまま機械学習モデルに入力することができないため、エンコーディングによって変換する必要があります。ラベルエンコーディングは順序があるカテゴリに、ワンホットエンコーディングは順序がないカテゴリに適しています。
今回は、機械学習におけるテキストデータの前処理について説明します。テキストデータはそのままでは扱いにくいため、適切な前処理が必要です。具体的には、トークナイゼーション、ステミング、レンマタイゼーションという処理を行います。
テキストデータの前処理とは?
テキストデータの前処理は、自然言語データを数値形式に変換し、機械学習モデルが利用できる状態にするためのステップです。生のテキストデータは、そのままではモデルに適しておらず、効率的に処理するために分割や変換が必要です。主な前処理手法としては、トークナイゼーション、ステミング、レンマタイゼーションがよく使われます。
例えで理解するテキストデータの前処理
テキストデータの前処理は「料理を作る前に、材料を洗って切る準備をすること」に似ています。料理を効率的に作るためには、材料を適切に処理する必要があるのと同じように、テキストデータも機械学習で使う前に準備する必要があります。
トークナイゼーションとは?
トークナイゼーション(Tokenization)は、テキストを単語や句読点といった単位(トークン)に分割する処理です。テキストデータをそのまま使うのではなく、トークンという小さな単位に分解することで、モデルがテキストを理解しやすくなります。
トークナイゼーションの例
例えば、次のような文章があったとします。
“私はAIが大好きです。”
この文章をトークナイゼーションすると、次のように分割されます。
- “私”
- “は”
- “AI”
- “が”
- “大好き”
- “です”
- “。”
このように、文章がトークンに分解され、それぞれが個別の単語や記号として扱われるようになります。
例えで理解するトークナイゼーション
トークナイゼーションは「文章を単語カードに分けること」に例えられます。文章全体を一度に理解するのではなく、単語ごとに切り分けることで、より細かいレベルでテキストを分析できるようになります。
ステミングとは?
ステミング(Stemming)は、単語の語幹(ステム)を抽出するプロセスです。ステミングの目的は、単語の変化形を同じ基本形に統一することで、単語のバリエーションを減らし、処理を効率化することです。例えば、「running」「runs」「ran」といった単語はすべて「run」という語幹に統一されます。
ステミングの実装例
以下の単語をステミングすると、次のようになります。
- running → run
- runs → run
- ran → run
このように、単語が異なる形を取っていても、その語幹に統一されることで、同じ意味の単語として扱われます。
例えで理解するステミング
ステミングは「動詞の活用形をすべて基本形に戻すこと」に例えられます。例えば、「食べる」「食べた」「食べます」といった動詞の活用形をすべて「食べる」に統一するイメージです。これにより、言葉のバリエーションを減らし、効率的にテキストを処理できます。
レンマタイゼーションとは?
レンマタイゼーション(Lemmatization)は、単語の辞書形(レムマ)を取得するプロセスです。ステミングが単純に語幹を抽出するのに対して、レンマタイゼーションは文法や意味を考慮して、単語を正確な基本形に戻します。これにより、より自然で意味のある形に統一することが可能です。
レンマタイゼーションの実装例
- running → run
- better → good
- wolves → wolf
レンマタイゼーションは、単語の意味を正確に捉え、文脈に基づいて適切な基本形に変換します。
例えで理解するレンマタイゼーション
レンマタイゼーションは「動詞や名詞を文法的に正しい基本形に戻すこと」に似ています。ステミングが単純に単語を切り詰めるのに対して、レンマタイゼーションは文法的な意味を維持したまま単語を統一する方法です。
ステミングとレンマタイゼーションの違い
ステミングとレンマタイゼーションは、どちらも単語を基本形に変換する手法ですが、アプローチが異なります。
- ステミングは単純に語幹を抽出するため、正確さに欠けることがあり、文法や意味を無視します。
- レンマタイゼーションは文法や意味を考慮して単語を変換するため、より正確ですが、その分処理に時間がかかることがあります。
例えで理解する違い
ステミングは「鉛筆を削って短くする」ような方法で、簡単に使える反面、意味を考慮しません。レンマタイゼーションは「辞書を使って正しい形を探す」ような手法で、文脈に基づいた正確な変換が可能です。
テキスト前処理の重要性
テキストデータの前処理は、モデルの性能に大きな影響を与えます。適切な前処理を行うことで、モデルはテキストデータをより正確に理解し、優れた予測結果を提供できるようになります。トークナイゼーション、ステミング、レンマタイゼーションを効果的に組み合わせることで、モデルの精度を高めることができます。
まとめ
今回は、テキストデータを機械学習モデルで扱うための前処理について解説しました。トークナイゼーションでテキストを単語に分割し、ステミングやレンマタイゼーションで単語を基本形に統一することで、テキストデータを効率的に処理できるようになります。テキスト前処理は、モデルの性能向上に欠かせないステップです。
次回予告
次回は、数値データのスケーリングについて解説します。Min-Maxスケーリングや標準化といった手法を使って、数値データの範囲を整え、モデルの学習効率を向上させる方法を学びましょう。
注釈
- トークナイゼーション(Tokenization): テキストを単語や記号に分割する処理。
- ステミング(Stemming): 単語の語幹を抽出するプロセス。文法や意味を無視して単純に語幹に統一する。
- レンマタイゼーション(Lemmatization): 単語を辞書形に変換するプロセス。文法や意味を考慮して正確な形に戻す。
- 語幹(Stem): 単語の基本的な部分。単語の変化形が削ぎ落とされた形。
- レムマ(LemmatizationのLemmas): 単語の辞書形。
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