【0から学ぶAI】第122回:異常値の検出

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前回の振り返り:データの可視化

前回は、データを視覚的に理解するためのデータの可視化について解説しました。棒グラフや折れ線グラフ、散布図などの基本的な可視化手法を使うことで、データのパターンや傾向を直感的に把握できることがわかりました。データの可視化は、異常値や外れ値を見つける際にも非常に有用です。

今回は、データ分析におけるもう一つの重要なテーマである、異常値の検出について学んでいきます。

異常値とは?

異常値(Outliers)は、データの中で他のデータポイントから大きく外れた値を指します。異常値は、データの傾向を歪める可能性があるため、分析の前に特定し、適切に処理することが重要です。

例えで理解する異常値

異常値は「クラスのテストで、ほとんどの生徒が50~80点の間にいる中で、一人だけ0点を取った生徒」のような存在です。このような極端な値は、他のデータと比べて異常に見えるため、何か問題があったのかを確認する必要があります。

異常値の原因

異常値がデータに現れる理由はいくつかあります。例えば:

  1. 入力ミス
    人為的な入力エラーによって、異常に高いまたは低い値が記録されることがあります。
  2. 測定誤差
    測定機器の精度の問題や、環境の影響により誤ったデータが取得されることがあります。
  3. 本当に異常な事象
    異常値が、実際に珍しい事象や突発的なイベントを反映している場合もあります。このようなケースでは、異常値は貴重な情報源となることもあります。

異常値検出の重要性

異常値を見逃すと、データ分析や予測結果が不正確になることがあります。以下のような理由で異常値の検出は重要です。

  • 分析結果の歪みを防ぐ
    異常値を含むデータは、平均値や標準偏差といった統計量に大きな影響を与えることがあります。異常値を特定して除外することで、より正確な分析が可能になります。
  • ビジネス上の重要なインサイトを得る
    異常値が示すパターンを分析することで、ビジネス上の異常事態や問題点を早期に発見できる場合があります。

異常値の検出方法

異常値を検出するための手法にはいくつかの方法があります。ここでは、代表的な方法を紹介します。

1. Zスコア(Z-Score)

Zスコアは、データポイントが平均からどれだけ離れているかを標準偏差単位で測定する手法です。通常、Zスコアが±3以上であれば、そのデータポイントは異常値と見なされることが多いです。

例えで理解するZスコア

Zスコアは「テストの平均点からどれだけ離れているかを測る定規」のようなものです。平均点から大きく外れている点は、異常な点数と判断できます。

2. IQR(四分位範囲)

IQR(Interquartile Range)は、データの第1四分位(Q1)と第3四分位(Q3)の差を使って異常値を特定する方法です。IQRの1.5倍以上Q1より下、またはQ3より上にあるデータは異常値と見なされます。

例えで理解するIQR

IQRは「成績のばらつき具合を示す目安」です。大部分の生徒が一定の範囲内に成績が収まる中で、極端に高いまたは低い成績を持つ生徒が異常値として認識されます。

3. ボックスプロットを使った可視化

ボックスプロットは、データの分布と異常値を視覚的に示すグラフです。中央にある箱(ボックス)がデータの範囲を示し、ボックスの外に離れた点が異常値として視覚的に浮かび上がります。

例えで理解するボックスプロット

ボックスプロットは「クラス全体の成績を箱に入れて整理し、箱から外れた異常な成績を見つける道具」のようなものです。大多数の成績は箱の中に収まりますが、異常な点は箱の外に点として表示されます。

4. 密度ベースの手法(DBSCAN)

DBSCANは、データポイントの密度に基づいてクラスタリングを行う手法です。この手法では、密度が低い領域にあるデータポイントが異常値として扱われます。

例えで理解するDBSCAN

DBSCANは「混雑した教室で、ポツンと離れて座っている生徒を見つける」ようなものです。ほとんどの生徒は密集して座っていますが、離れて座っている生徒は異常な存在として目立ちます。

異常値の処理方法

異常値を検出した後には、そのデータをどう扱うかを決める必要があります。異常値を処理する方法にはいくつかの選択肢があります。

1. 異常値を削除する

異常値が誤ったデータや明らかな入力ミスである場合、削除するのが適切です。しかし、削除する前にそのデータが重要な情報を持っていないかを確認する必要があります。

2. 異常値を修正する

もし異常値が明らかに誤った値であれば、正しい値に修正することができます。例えば、桁の打ち間違いなどは修正可能です。

3. 異常値を無視する

異常値が分析に大きな影響を与えない場合、無視して分析を進めることも一つの方法です。しかし、異常値を無視する際には、その影響を十分に理解しておく必要があります。

4. 異常値を特別に扱う

異常値が珍しいが重要な現象を示している場合、それを別途分析対象として扱うことも有効です。例えば、ビジネスで特定の顧客が異常な購買パターンを示している場合、それは特別なニーズを持つ顧客である可能性があり、別のマーケティング戦略が必要になるかもしれません。

まとめ

今回は、異常値の検出について解説しました。ZスコアやIQR、ボックスプロットなどの手法を使えば、異常値を効率的に検出し、分析の精度を高めることができます。異常値の扱い方には注意が必要ですが、正しく処理することでデータの信頼性を高め、より正確な結果を得ることができます。


次回予告

次回は、データの分布と統計量について解説します。平均や中央値、標準偏差といった基本的な統計量を理解し、データ分析の基礎を固めましょう。


注釈

  1. 異常値(Outliers): 他のデータポイントから大きく外れた値。
  2. Zスコア(Z-Score): データが平均からどれだけ離れているかを測る指標。
  3. IQR(四分位範囲): データの範囲を四分位で表し、外れ値を特定する手法。
  4. ボックスプロット(Box Plot): データの分布を視覚的に表現し、異常値を示すグラフ。
  5. DBSCAN: データの密度に基づいて異常値を検出するクラスタリング手法。
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