【0から学ぶAI】第93回:セグメンテーション

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前回の振り返り:物体検出

前回の記事では、物体検出(Object Detection)の基本について解説しました。物体検出は、画像内にある物体を検出し、その位置を特定する技術で、バウンディングボックスを用いて物体を囲む形でその位置を示します。物体検出は、自動運転やセキュリティカメラのシステム、医療画像解析など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

今回は、物体検出よりもさらに詳細な分析が可能なセグメンテーション(Segmentation)について解説します。セグメンテーションは、物体検出が画像の中の物体を四角で囲むのに対して、画像内の各ピクセルがどの物体に属しているかを分類する技術です。これにより、画像全体をより細かく理解することが可能になります。

セグメンテーションとは?

セグメンテーション(Segmentation)とは、画像内のすべてのピクセルを分類し、それぞれのピクセルがどのカテゴリに属しているかを決定する技術です。物体検出が画像の一部に物体が存在することを特定するのに対して、セグメンテーションは画像全体を詳細に分析し、各ピクセルがどの物体に関連しているかを把握します。

セグメンテーションは、主に2つのタイプに分類されます。

  1. セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation): 画像内のすべてのピクセルをカテゴリに基づいて分類します。例えば、画像内のすべての車や建物、道路などをピクセル単位で分類する手法です。
  2. インスタンスセグメンテーション(Instance Segmentation): セマンティックセグメンテーションに加えて、同じカテゴリの中でも個々の物体を区別します。たとえば、複数の車が画像にある場合、それぞれの車を別々に認識することができます。

例えで理解するセグメンテーション

セグメンテーションを「パズルを組み立てる作業」に例えることができます。物体検出がピースの形状を見て「この部分にピースがある」と認識するだけなのに対し、セグメンテーションは、パズルの絵柄に基づいて「どのピースがどの絵の一部か」を判別して、絵全体を完成させるような作業です。各ピース(ピクセル)を正確に分類することで、より詳細な画像理解が可能になります。

セグメンテーションの仕組み

セグメンテーションは、画像のすべてのピクセルを分類するために、深層学習モデルを利用します。これらのモデルは、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)をベースにして、画像内の詳細な特徴を捉えることができます。以下は、セグメンテーションがどのように行われるかの基本的な流れです。

1. 特徴抽出

セグメンテーションでは、まずCNNを使って画像の特徴を抽出します。物体検出の場合と同様に、畳み込み層を使って画像の重要な特徴をピクセル単位で捉えます。ここでは、画像の細かいパターンや境界線などの情報を取得します。

2. ピクセルの分類

次に、抽出された特徴を基に、各ピクセルがどのカテゴリに属しているかを分類します。この分類プロセスは、画像内のすべてのピクセルに対して行われ、結果としてピクセルごとのラベルが付与されます。例えば、道路の部分には「道路」、車の部分には「車」というラベルが付きます。

3. 境界の明確化

セグメンテーションでは、各物体の境界が明確に示されることが重要です。これにより、画像内の物体がどこまで広がっているかがわかり、物体のサイズや形状を正確に把握できます。

例えで理解するセグメンテーションの仕組み

セグメンテーションを「塗り絵」に例えるとわかりやすいです。最初にアウトラインを捉え、その後、色ごとに塗り分けていくことで、どの部分がどの色に対応しているかが明確になります。同様に、セグメンテーションでは、ピクセルごとに物体や背景の情報を与え、それを基に全体を分類します。

セグメンテーションの代表的な手法

セグメンテーションを実現するためには、さまざまなモデルや手法が開発されています。ここでは、代表的なセグメンテーション手法について紹介します。

1. U-Net

U-Netは、医療画像解析などで広く使われるセグメンテーションモデルです。このモデルは、画像全体をエンコードして圧縮し、その後にデコードして詳細なピクセル分類を行うことで、非常に高精度なセグメンテーションを実現します。U-Netは、特に画像中の微細な特徴や境界を捉えることが得意です。

2. Fully Convolutional Networks(FCN)

FCN(Fully Convolutional Networks)は、従来のCNNに全結合層を持たせず、画像全体をピクセルごとに分類するモデルです。これにより、画像のすべてのピクセルに対してラベルが割り当てられ、セマンティックセグメンテーションが可能になります。

3. Mask R-CNN

Mask R-CNNは、物体検出で使われるR-CNNをベースにしたセグメンテーション手法です。このモデルは、物体検出に加えて、検出された物体に対してマスクを作成し、物体ごとのピクセル分類を行います。これにより、インスタンスセグメンテーションが実現されます。

例えで理解するセグメンテーション手法

これらの手法を「絵を描くアプローチ」に例えると、U-Netはまず大まかに描いた後、細かい部分を修正して完成させるようなアプローチです。一方、Mask R-CNNは、物体の輪郭を先に描き、その中を塗り分けることで細かく分類する方法です。

セグメンテーションの応用例

セグメンテーションは、画像の詳細な分類を行うため、多くの実用的な分野で活用されています。

1. 医療画像解析

セグメンテーションは、医療画像解析でよく利用されており、特に病変の特定や腫瘍の検出に役立ちます。MRIやCTスキャンの画像を解析して、腫瘍の境界を正確に識別することで、早期診断や治療計画に貢献しています。

2. 自動運転

自動運転車は、道路や周囲の環境を正確に理解するためにセグメンテーションを利用しています。道路の境界や歩行者、他の車両などをピクセル単位で識別することで、より精密なナビゲーションや安全運転が可能になります。

3. 衛星画像解析

セグメンテーションは、衛星画像の解析にも役立っています。例えば、都市の建物や農地の境界を識別し、土地利用の分析や環境モニタリングに応用されています。

例えで理解する応用例

セグメンテーションの応用を「地図作り」に例えるとわかりやすいです。地図を作る際、建物や道路、川などの細かい境界を正確に描き分ける必要があります。セグメンテーションは、画像の中でこのような細かい分類を行う技術であり、さまざまな分野で精密な分析を可能にします。

まとめ

今回は、画像内

のピクセル単位で分類を行うセグメンテーション(Segmentation)について解説しました。セグメンテーションは、物体検出よりもさらに詳細な分析が可能であり、画像内のすべてのピクセルを分類して各物体や背景を特定する技術です。セマンティックセグメンテーションやインスタンスセグメンテーションなど、異なるアプローチがあり、医療、自動運転、衛星画像解析など、多くの分野で応用されています。


次回予告

次回は、YOLOモデルについて解説します。YOLOは、リアルタイムで物体検出を行う非常に高速なモデルで、特に動画やリアルタイムのアプリケーションで効果的です。次回もお楽しみに!


注釈

  1. セグメンテーション(Segmentation): 画像内のすべてのピクセルを分類し、それぞれのピクセルがどのカテゴリに属しているかを決定する技術。
  2. セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation): すべてのピクセルをカテゴリに基づいて分類する手法。
  3. インスタンスセグメンテーション(Instance Segmentation): 同じカテゴリ内でも個々の物体を識別して分類する手法。
  4. U-Net: 医療画像解析でよく使われるセグメンテーションモデル。
  5. Mask R-CNN: 物体検出とセグメンテーションを同時に行う手法。

これで「セグメンテーション」に関する記事は完成です。次回の「YOLOモデル」もお楽しみに!

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